映画『Say a Little Prayer』は、ラテン系アメリカ人のキャラクターを描いたロマンティック・コメディです。この映画の大きなポイントは、普通の映画ではよく見る「貧困」や「移民問題」といったテーマを避け、成功したラテン系のキャラクターたちを描いていることです。主人公アデラは、テキサス州サンアントニオで開店を控えたアートギャラリーのオーナーで、立派な家を持つような成功した女性です。この点で、映画はラテン系の人々を違った視点で描くことに挑戦しています。
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アデラの恋愛問題と人間関係の複雑さを描いたストーリー
でも、物語の内容自体は少し普通すぎる感じがします。アデラは、恋人のエンリケと一緒に暮らしていますが、彼が結婚を考えていないことに悩んでいます。また、エンリケが他の女性と浮気をしているかもしれないという不安も抱えていて、彼女の私生活はあまりうまくいっていません。ここからアデラがどう問題を解決していくのかが、物語の大きなポイントになります。
・恋人との関係性のもつれ
・結婚への不安と浮気の疑念
ラテン系女性たちの友情と個性が描かれるアデラの親友たちとの関係性
アデラの親友であるルビーとクリスティーナは、それぞれ違うタイプのラテン系女性です。ルビーはとても元気で少し短気な性格の女性、一方でクリスティーナは落ち着いた考え方を持っている女性です。彼女たちもアデラを支えながら、それぞれの人生の問題を抱えています。映画の中で彼女たちの関係性や友情が描かれる場面もありますが、その描写は少し平凡に感じます。
・アデラの親友ルビーとクリスティーナ
・それぞれの個性と人生の問題
宗教的テーマと新たな出会い:ラファエルとの関係がもたらす展開
映画には「祈り」というテーマもあります。アデラの家族は、理想的な恋人を見つけるために「聖アントニオ」に祈りを捧げるという信仰を持っています。アデラも、自分が年齢を重ねてきたことで「本当に理想の相手を見つけるチャンスがあるのか?」と不安になり、祈りを始めます。こういった宗教的な要素が物語に絡んでくるのは、ラテン系の文化ではよく見られるテーマですが、映画では深く掘り下げられることなく、ただ表面的に描かれています。
・理想の恋人を祈りで求めるアデラ
・宗教的テーマが浅く描かれる
映画の中で、アデラはラファエルという男性と出会います。ラファエルは、プエルトリコ出身のアーティストで、演じているのは有名な歌手ルイス・フォンシです。フォンシは歌手として有名ですが、映画では演技をしています。アデラとルビーはそれぞれラファエルと出会い、少しずつ彼に引き寄せられていきますが、これがアデラとルビーの友情に亀裂を入れる原因にもなります。この部分も、予想できる展開が続いていて、驚きはあまりありません。
映画の映像はとてもきれいで、サンアントニオの街並みや観光名所がたくさん登場します。街の美しい風景を楽しむことができる点は良いですが、映像がちょっとインスタグラムっぽい、キラキラした感じで特に個性的な美しさは感じません。映像のクオリティ自体は高いのですが、もう少し特徴的なビジュアルが欲しかったなと思います。
映画のテーマは、過去に公開された「トルティーヤ・スープ」や「チェイシング・パピ」といった作品と似ています。これらの映画もアメリカに住むラテン系の人々を描いたもので、英語を話すラテン系の観客に向けたコメディです。でも、これらの映画にはもっと深みがあり、キャラクターたちの個性や成長がしっかり描かれていたように感じます。
『Say a Little Prayer』の中では、アデラを演じるヴァネッサ・ヴァスケスが時々感情的なシーンに挑戦していますが、それも映画全体の普通さを打破するには至っていません。映画の展開自体が予想通りで、あまり驚きがないため、見終わった後には「まぁ、こんな感じだったね」という印象だけが残ります。
でも、映画の存在自体には意味があります。アメリカの映画の中でラテン系のキャラクターをもっと多様に描くことは大切ですし、こういった作品が増えることで、ラテン系アメリカ人の映画業界がもっと広がっていくことを期待しています。『Say a Little Prayer』は、軽いコメディとして楽しむことができますが、深いメッセージや感動を求めている人には少し物足りないかもしれません。それでも、ラテン系の人々を成功したキャラクターとして描くことで、映画の中で新しい一面を見せている点は評価できます。